第553話・・・アメリカでも自然体ーその2
2007年 01月 17日
多忙な草野さんから、直接お返事が頂けるとは思ってもいませんでした。
ぜひ、会員として仲間に入れてください。それと、ブログでもぜひ紹介して、みなさんを励ましてください。私の励みにもなります。私はアメリカのテキサス州ダラス郊外に住んでおります。テキサスのジュニアのバレーボールに現況について少しお話させてください。長いメールになりそうなので、お時間のある時にお読み下さい。
アメリカはとても広いので、州ごとに違いはあると思いますが、私の住んでいるダラス周辺は、スポーツがとても盛んです。女の子のスポーツの第一位はサッカーです。次に器械体操です。しばらくの間、バレーボールはマイナーなスポーツでしたが、人口の増加にともない、ここ数年でたくさんのクラブチームが誕生し、人気度を高めています。学校の部活動は、季節ごとにスポーツが変わります。通っている学校のバレーボールチームとしてプレーできるのは、9月から11月までのたった三ヶ月です。この短い期間で、試合に参加させる為、入部試験を行います。
小学生バレーは今のところありません。ほとんどの子供達は中学一年生で初めてバレーボールに出会うことになります。バレーを本格的に学び、次の学校のバレーチームに選抜されたい子供達は、クラブチームに所属することになります。しかも、クラブチームでさえ12月から6月までの六ヶ月です。もちろんクラブチームにも毎年入部試験があります。強いクラブチームほど所属するのが困難で、部費も日本では考えられない値段です。高いところでは、半年間で$6000プラス遠征費、一番安いところで$1000です。身長制限もあります。一定の身長に達していないと、試験さえ受けられません。
ここでは、バレーは(その他のスポーツも)ビジネスが目的です。ビジネスが目的なので、勝たなくてはなりません。強いチームでないと、人が集まりません。ビジネスが成り立ちません。コーチも勝つために子供達にプレッシャーをかけます。親も高い部費を払っているので、子供達にものすごいプレッシャーをかけます。逃げ場のない子供達の気持ちを考えるだけで、涙が出てきます。彼女たちはただ純粋にバレーボールが好きなだけなのに…。
肉体的にも、成長期の女の子にはかなり過酷な練習を行う為、怪我、故障はもちろん、月経が一時的に止まってしまって、骨が弱くなったり(更年期と同じ状況)、生殖器の成長にも支障を来しているそうです。一例ですが、バレーに限らず過激な練習こなしている17歳の女の子の子宮の大きさは、健康な初潮を迎える前の7歳から8歳の小学生の子宮のサイズにも満たないようです。恐ろしい現実です。これはどう考えても正当化されてしまっている虐待です。
アホな大人達のせいで精神的、肉体的に苦しい思いをしている子供達は、日本に限らずアメリカでも同じです。草野さん、ぜひこの自然体バレーの精神・技術を全世界の指導者に広めて下さい。私もお手伝いができる様、日々努力と勉強を重ね、まずは今抱えている9人の中学一年生の一人一人を幸せにすることから始めます。自然体バレー塾ドリル英語版、中国語版も近い将来必要になるのではないでしょうか?私たちのチームの発足は、私の長女(小学校3年生)の親友の中学一年生のお姉さんが、学校のバレーのシーズンを終えて、バレーに興味を持ち始め、クラブチームの試験に試みたところ、痩せの小柄でパワーがないという(訳のわからない)理由で落ちてしまいました。(彼女は2歳の時から器械体操とサッカーを本格的にやっていて、運動能力は抜群なんですよ!)それでもバレーボールを学びたいという話を聞きました。
その子の何人かの同級生も、両親の経済的な理由などでクラブチームに入れないが、バレーは続けたいという子供が集まり、英語を母国語としない、名もない、コーチ経験なしに等しく、背丈もアメリカの中学生と殆んど変わらない私が、子供達の指導を引き受けることになりました。
とにかく、10年以上ものブランクもあるし、アメリカでプレーしたことがないので、まずは専門用語を覚えなければなりませんでした。こちらで出版されているバレーボールの教材を読み漁りました。有名な大学バレーの監督が出しているDVDや本も購入して、睡眠時間を削って勉強しました。いくつか有名なクラブチームの練習も何度も見に行きました。
私のバレーボール現役時代の何人かの監督の指導を思い出そうとしても、細かい技術の指導方法はほとんど思い出せず、根性でレシーブ(?)しろ!とか気合がたりない!根性が曲がっているから、トスも曲がる!などしか、頭に残ってません。怒鳴られる、叩かれる恐怖とプレッシャーと怖い監督の顔しか思い出せないのが悲しい現実でした。まったくどこから始めていいのか分からず、気持ちだけ焦って空回りしていたそんな時、自然体バレー塾のドリルに出会ったのです。自然体バレー塾の理念に強く共感を覚えました。体の仕組み、精神、神経と脳の関係をここまで、分かりやすく説明し、それにかなった練習方法を教えてくれる教材は他にはないと思います。最初の10ページを読むだけで、草野さんとチームの皆さんの知識、努力、情熱が伝わってきます。教材ではなく、これは指導者のバイブル(聖書)です。
練習場所の確保と学校との交渉にだいぶ時間がかかってしまい、最初の練習の日までだいぶ時間があったので、まずは、ドリルで勉強をしてDVDで実際の動きを覚え、練習のスケジュールを立て、私の通っているフィットネス・クラブの狭いラケットボールのコートで、私の小3の長女と5才の次女に試してみました。ボール遊び、床遊びからはじめました。前回のメールで質問したローリングも、本とDVDのご指導の通り、意識を外にやる、失敗から始める方法でやってみました(手袋・長袖を着用)。娘たちは、一回のレッスンで、滑らかにローリングすることができたので、中学生に指導する時も大丈夫だろうと思っていました。そして、同じ方法で実際に中学生に試したところ、思ったより難しそうなので驚きました。お腹が出ていて、滑れない子どもなどもいました。まだチームの練習は3回しか行っていなく、ローリングの練習も前回の練習で教えたばかりなので、焦らず、自分の指導の仕方・言葉などを日々反省し、工夫しながら、やっていこうと思っています。それにしても、草野さんがよくおっしゃっているように、小学生のスポンジのような吸収力と運動能力は恐ろしいですね。これほど中学生と小学生の違いがあるとは思いませんでした。
長くなりましたが、最後に一つ私たちのクラブと自然体バレー塾の仲間にとって、とてもいいことがあったのでお伝えします。本当に偶然なのですが、最近、私の近所に背の高い若い女性が引っ越してきました。犬の散歩で出会い、世間話をしていたところバレーボールの話題になりました。これから、中学生を指導するという話をしたら、実は彼女は有名なクラブチームのコーチを6年ほどやっていましが、トーナメントに勝つだけが目的のバレー、利益だけが目的のクラブ側の運営、自分の満足のために子供を利用している、クレイジーな親の対応に嫌気がさして、
妊娠をきっかけに、コーチを2週間前に辞めたとのことでした。彼女は10歳の頃からバレーをはじめ、大学もバレーボールの奨学金で卒業しています。
高校の頃から肩を壊し、大学時代は3回の肩の手術を受けていて、大学四年間で実際プレーできたのは1年半だったそうです。私が目標にするクラブの運営方針などを伝えたところ、ぜひ一緒にやりたいと言ってくれました。自然体バレー塾の教材を紹介し、説明しました。草野さんの深い知識、斬新なアイデア、練習方法に感動していました。特に自然体バレーのスパイクのフォロー・スルーに驚いていました。なぜなら、彼女はボールをスナップしてリリースした後、腕を下に振り下ろすという指導を長い間受けていたそうです。アメリカでも主流だそうです。
彼女は、肩の故障の痛みを和らげる為に、ボールのリリース後、前腕を回内させ、反対側の股関節に持っていくという動作を自分でやり始めたそうです。最初から知識のある指導者に、このように教わっていれば、ここまで肩を壊すことはなかったかもしれないわ。と言っていました。
彼女がパートナーとして加わってくれることになり、4月から小学生を指導することにもなっています。 ジェニファーと私、アメリカでも自然体バレーの輪は、広がっています。
草野さんに会えるの日を楽しみにしています。お体にお気をつけてください。
本当にありがとうございました。 ベーカー美智子