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by kusanokenji
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第2933 話・・・新潟高体連

第1074回バレー塾
 in新潟
2019年4月16
 110名
述べ参加数:207、490

常識に疑問を持て!
人の作ったものは時間とともに陳腐化する
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新潟県高体連指導者研修会レポート

新井中学校 矢沢 洋一

はじめに

「新潟県の高体連が草野先生に講師を頼んだ」と聞いた時、ビックリしました。それと同時に「やっぱり高校でも草野先生の指導を学びたいと思っている指導者がいるんだ」と思いとてもうれしくなりました。私は、中学校の所属ですが、草野先生が高校の先生方にどんな話をされるのか聞きたくて、専門委員長さんにお願いして今回参加させていただきました。


草野先生との出会い

まず、草野先生との出会いについて書かせていただきます。私は上越バレーボール協会に所属しています。2005年、私は「上越バレーボール協会で指導者講習会を行うから講師を探してほしい」と頼まれました。その頃草野先生は、バレーボールマガジンに連載をされていて、私はそれを興味深く読んでいました。その内容がとても理論的で素晴らしかったので、「講師をお願いするならこの人だ」と思いました。そして、思い切ってメールを送ったらラッキーなことに私たちが予定していた日にお越しいただけることになりました。1日目の午後からは春日中で講義が行われました。今日、話をされたような解剖学や体のメカニズムが中心でした。骨の数、筋肉の数に始まり「正しいスナップ」「危険なスパイク」「正しいスイング」等の話を聞いて衝撃を受けました。それまで、中学校で全国大会に出場された監督や全日本選手の講習会を何回も受けたり、有名高校の監督さんから話を聞いたりしていましたが、こんなに解剖学や生理学、物理学に基づいた話は初めてでした。解剖学の話を聞いたのは大学以来だと思います。

次の日はリージョンプラザに中学生を300名以上が集まり実技講習が行われました。スモールステップで段階的にメニューが進んでいくので、初心者の生徒もぐんぐん上手になっていきます。その斬新な指導にも衝撃を受けました。


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この15年の歩み

この講習会に能生中で外部コーチをされている滝川さんも参加していました。その後私も滝川さんも新潟県に草野先生をお呼びしたり、県外で行われるバレー塾に参加したりして研修を深めました。(最近は滝川さんが年に23回能生に草野先生をお呼びしています)私は今回で40回目の受講になりますが、草野先生の指導は常に進化し、奥が深いので何回受講しても新鮮です。私は何回受講しても草野先生の教えを正しく実践できていませんが、きちんと実践しているのはモデルで登場する能生中と能生ジュニアのコーチの方々です。能生ジュニアや能生中生徒の理にかなった美しいフォームを是非高校の先生から注目して見てほしいと思います。


体の都合を考えた理論的な指導をどう受け止めてもらえたか

今回の講習は、「部活動顧問に求められること」というテーマで話を進められました。講義の前半は技術編です。まずは、身体のメカニズムです。「正しいスナップ」に始まり、「正しい構え」「理にかなった手の組み方」「正しい膝の使い方」「スパイクの肩のつまり」「危険なサーブ」「正しい面づくり」「危険なスパイクの片足着地」と話が続きました。そして、「なぜ、はじかないレシーブを考えたのか」という問いに対し、小学生にも分かるような解説をされました

スパイクのスピードは小学生の初心者でも時速36km。36kmをmに換算すると36,000m。1時間は3、600秒。36,000mを3、600秒で割ると秒速10m。しかしながら人間の反応時間は02秒。スパイクは02秒で2mも進む。レシーバの距離は約6m。そこで、腕の振り方を上下に振ると三倍の時間がかかる。上げて、下げて、そこからボールに当てるからである。02x3回=6m/秒。気が付いた時はボールは過ぎ去っている。だからディグは1歩も動けないと考えた方がいい。実際のプレーを客観的に見るとそうである。従って厳しいボールには膝滑りや這いつくばりの技術が必要というのが結論です。(まさにプログラミング教育です)


技術編はさらに超クロススパイクへと続きました。動画の中では、能生ジュニアや能生中の選手が実に美しいフォームを披露していました。

この様な理論的な指導を高校の先生方はどのように受け止められたのでしょうか。「正しいバックスイング」「正しいスパイクフォーム」を理解するには「床反力」「慣性の法則」「伸張反射」「連鎖運動」等々の理解が必要です。今回の講習では時間が足りずそれらの話はほとんどできませんでした。理解できなかった方、疑問に思われた方は是非、バレー塾に参加して直接草野先生の指導を見たり、話を聞いたりされたらどうでしょうか。スケートの小平選手は自ら解剖学を学び、滑りの研究をしているそうです。バレー界にも解剖学や物理学を勉強し、理論的な指導をする指導者が増えてほしいと願ってやみません。

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後半は人間学の話

働き方改革に伴う部活指導員(外部コーチ)の問題

高校にもこの様な波が押し寄せているのでしょうか。中学校の教員は、とにかく帰りが遅いです。9時10時が当たり前の世界になっています。そして、さらに土日に部活があります。経験があり好きでやっている方はやりがいがあると思いますが、専門的な知識のない方にとってはきびしい世界です。技術的な指導の問題もありますが、選手同士のもめごと、保護者からの要求等様々な困難に直面します。また、子育て中の若い教員にとって自分の子どもを置いてまで指導にいかなければいけない現実もあります。その様な教員の負担を減らそうと中学校現場では部活指導員の導入が進められています。ありがたい話なのですが、私も草野先生同様とても危険を感じています。技術指導だけできる人では、選手決めでもめた時、チーム内でいじめが起きた時、コーチと選手がうまくいかなかった時等様々な問題を解決できないのではないかと心配しています。その時困るのは間に入いる顧問です。高校の先生方にも中学校でこのようなことが進んでいることを理解してもらえるとうれしいです。

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体罰・暴言の問題 

私も怒鳴る指導者でした。暴力や暴言が脳を萎縮させる事実を知った時、「その時の生徒に申し訳なかったな」ととても心が痛くなりました。中学校現場では、体罰調査が入ってから「体罰」目にすることはなくなりました。しかし、言葉の暴力で注意されることはまだあります。高校現場ではどうなのでしょうか。草野先生は体罰が当たり前だった時代から「体罰はあかん」と訴えられてきました。


高校生が、「監督(コーチ)から言われていやだった言葉」が画面に出てきました。リアルな言葉が並んでいました。今でも良く耳にする言葉です。高校の先生方も耳が痛かったのではないかと思います。私も正直「俺も言ったことがある」と思いました。「シメル」「追い込む」といった言葉がバレー界からなくなり、怒らなくても選手が生き生きと練習する世界標準のコーチングを学んでいきたいと私は思っています。

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アドラー心理学

私も草野先生に紹介されるまでは全く知りませんでした。草野先生から紹介された当時、「嫌われる勇気」という本がベストセラーになっていました。草野先生から教えてもらったり、本やテレビで勉強したりして「勇気づけ」「他者貢献」「共同体感覚」「内発的動機づけ」「課題の分離」「褒める弊害」等を学びました。その当時は学年主任をしていましたので、学年集会で生徒に話をしたり、学年だよりで保護者に勉強したりしてもらいました。学年職員や生徒:保護者から「とても役にたった」という感想を多くもらいました。ぜひ、一度勉強してみるといいと思います。


三つの納得  (選手の納得  周囲の納得 世間の納得)

ディグでは「かかとをあげて構えろ」「手の平を上にむけて低く構えろ」「ひざをつくな」「回転レシーブをしろ」、スパイクでは「反って打て」「打点を高くしろ」「鳥の羽のように大きくバックスイングしろ」等を指導される方やその様に思っている保護者(バレー経験のある方)がいます。また、ジュニア経験者はクラブでそのように習ってきている場合もあります。私はまだまだ人間力が足りなかったり、指導力が足りなかったりするので草野先生から習ったことを、そのまま受け売りしても、自分というフィルターを通してしか伝えられないので生徒に話しても納得してもらえないことが多々あります。選手の納得が得られないダメ指導者の典型です。中学生は高校生のプレーを見たり、youtubeで全国大会の試合を見たりして好きな選手のまねをします。スパイクでは落としてかっこよく決めようと力みます。「反って打つと腰を痛めるよ」とアドバイスしてきいてくれない選手もいます。選手が納得しなければ親も納得してくれません。ましてや世間の納得など得られるわけはありません。みなさんは、どうですか。「選手は本当に監督・コーチの指導に納得していますか」「保護者は?」「同僚は?」「世間はどうですか?」もう一度自分の指導を振り返るチャンスかも知れません。

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小・中・高の連携  高体連の先生方に感謝とお願い 

 退職した中学教師の戯言ですが 幸せな子どもを考えた指導

今回、高体連の先生方が草野先生の話を聞く機会を作られたことに心から感謝したいと思います。その理由は理論的な指導や三つの納得が得られるような指導が高校で広まれば、中学校や小学生の指導者にもいい影響を与える可能性が高いからです。小学生の指導者や中学校の指導者が高校の指導者に影響を与えることはかなりハードルが高いと思います。でも、逆はスムーズにできるような気がします。怒られたり、怒鳴られたり、しごかれたりすることなく、自分から生き生きと練習するチームが高校にあれば、その指導は中学校や小学生に広まっていくのではないかと思います。そうしたらバレー好きの幸せな子どもが増えるのでないかと思います。また、小学校や中学校でせっかく理にかなったバレーを学んでも、高校で強制的に故障するフォームに直されてしまうという悲劇もなくなります。小学生も中学校もヤングもいろいろ問題を抱えています。それぞれの団体でそれらの問題を解決しなければなりませんが、高校の先生方が、小中学生にあこがれるようなチーム作りをされることがその解決の手助けになると思います。

最後に

私はこの3月に退職し、今は再任用で新井中に勤務しています。高校の先生方に失礼な言い回しもあったかもしれませんが、退職した中学教師の戯言だと思ってお許しください。高体連の皆様ありがとうございました。


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by kusanokenji | 2019-04-18 15:44 | ■連載“日々努力”