第2932話・・・バレー塾in福岡
2019年 04月 18日
第1073回バレー塾

自然体バレー塾in福岡レポート
2019.4.14
チームアカルイミライ 尾上 晋太郎
◎声は「出す」?「出る」?
子どもたちが集まりだすと、最初のあいさつもそこそこに2011w-upから始まり「足音合わせ」や「抱っこ1周」、「足し算じゃんけん」など、バレー塾では定番のメニューで子どもたちの緊張をほぐす。次第に子どもたちのテンションも上がりワーワー、キャーキャーと声が弾みだす。
すると先生が「福岡の子たちは元気があってええなぁ。楽しくなったら声は自然と出るやろ?」と子どもたちに尋ねる。「声は出さなくても出るんです。なのに君たちの監督や親は『声出せ!声出せ!』って言うやろ?何かおかしくない?」と子どもたちに声は自発的に出るものという気付きを促す。
同時に大人たちにチクリ。

◎難解な用語も身近な例えで分かりやすく
「スナップを効かせる」とは何ですか?と先生が質問する。手首をクイックイッと動かす子どもたち。「それはスナップじゃないよ。手首の掌屈と尺屈と回内を同時にするのがスナップだよ!」と解剖学の専門用語を躊躇なく並べる。当然子どもたちは「??」の顔に。それを見て先生が「トイレで手を洗った後、ハンカチを忘れてた時どうする?」と子どもたちに投げかける。すると子どもたちが手首をピッピッと振る動作をすると同時に「ああ~」と感嘆の声を上げる。
子ども相手だからと幼稚な言葉でごまかすのではなく、正しい用語を分かりやすい例えを使って子どもたちに伝えていく。これが自然体バレーの素晴らしさの一つ。我々指導者が取り入れなければならない部分だと痛感する。

◎自分と向き合う2分間10種トレ
自分力を高めるためのトレーニング「2分間10種トレ」。一通りの動きを説明した後、各種目に分かれてスタート。普段から自然体に取り組んでおりスムーズにできる子、バレー塾初参加で何をどうしていいか分からずオロオロする子が入り交じり、会場は騒然とした雰囲気に。ハラハラする指導者の気持ちを尻目に「今はできなくていいんだよ。」と先生は気に留めない様子。「はじめはできなくて当たり前。それを『何でできんのや!』と怒る大人の方がおかしい。こんなものは2、3回すれば誰でもできるようになります」とさらり。
事実、2日目には全員が黙々と取り組む動画で見る光景が目の前に広がった。
先生の見立てはもちろんのこと、子どもたちの成長力に驚かされた。
◎邪魔しているものを取り除く
弾かないレシーブの練習中、先生がある子のフォームを全員に見せ「この子のどこを直せばいいですか?」と質問する。レシーブの面を作る前にわずかに腕が屈曲し、ボールヒットまでに腕を下ろさないといけないということは分かるのだが、それを直すための言葉が出てこない。先生が「小指と薬指をおヘソの下(丹田)につけてみて」と言うと、見事にフォームが改善する。同様にスパイク練習でも、たったの一言でフォームが修正されていく。「動きを邪魔しているものを見極め、取り除いてあげる。その眼力を持った指導者が何人いるの?」先生から厳しいゲキが飛ぶ。
◎相手の意見は否定しない
レシーブするときにボールのどこを見るか?という問いに、
「ボールをしっかり見る」と答えた子がいた。「どうしてそう思うの?」と先生が聞くと、はっきりとした口調でみんなの前で自分の考えを発表した。なんと2年生になったばかりだという。先生の二の矢の質問にも動じず、見事に自分の考えを発表してくれた。この年でこれだけ自分の意見が言えるのは立派としか言いようがない。
残念ながら理論的な正解ではなかったのだが、先生はその子の答えを否定せず「そうしたらこうなるんじゃないかな?」とその子に気づきのヒントを投げかけ、さらなる思考を促す。間違いは否定するのではなく、正しい方に導いてあげるという指導者に必要不可欠なスキルを目の当たりにした。
◎基礎から基本へ
1日目の最後に「3×3はいくつですか?」と先生が子どもたちに質問する。子どもたちから異口同音に「9」という答えが返ってくる。「じゃあ3m×3mはいくつですか?」と聞くと、小学校高学年以上の子たちから「9㎡」という答えが返ると同時に低学年から「平方メートルって何?」という質問が出る。
「平方メートルは何を表すの?」の問いに「面積」と返す子どもたち。「3×3=9というのが基礎。この基礎に面積という目的を合わせたものが9平方メートル、これが基本やな。基本には必ず目的がある。だからバレーでも基本練習には必ず目的があります。」と子どもたちに語りかける。学校で習う授業もバレーの練習も理屈は同じということを通して応用的な考え方の講義をして1日目は終了した。

◎2日目は頭を使うところから
ウォーミングアップが終わって、まずは頭の勉強。医学、解剖学、体罰・暴力など朝からかなり難しい話が続くが、先生の解説に食い入るように聞く子どもたち。スポーツができる子は勉強もできる。目先の勝ち負けや結果を求めず、スポーツ馬鹿を作らない。バレー部に入れば頭もよくなる、努力が好きになる。これからのジュニアスポーツの指導者は頭のいい子を育てられなければいけない。
◎親学も合わせて学ぶ
「福岡のお母さんたちはええなぁ!」とのことで、2日目の午前中に保護者のための時間を設けた。母の愛、父の愛、校長先生の授業など、子どもたちを取り巻く大人の心情を学ぶ。指導者として、親として、もし我が子が動画と同じ状況になったら自分だったらどうするだろうかと自問自答。やはり未来ある子どもたちを指導するには、子どもが学ぶ以上に大人が学ばなければならないと感じた。
◎自然体の恐ろしさ!?
人間の体には筋肉が約400個ある。普通のレシーブやスパイクなどでは100個くらいしか使わないが、自然体のダンスで300近い筋肉を鍛えることができる。使われない筋肉はどんどん錆びていく。だからダンスが重要。
また、時間を追うにつれ、ボールを使った練習もだんだんと複雑な動きになってくる。Aクイックという言葉を知らない子どもたちでも、実際にやっているのはAクイック。超クロス、逆回転バックトスなど知らず知らずのうちにトップレベルの技術を身につけているのが自然体バレーの恐ろしさである。

◎2020教育改革に向けて
2020年度から始まる教育改革に向けて、「自立」、「自分力」、「自己決定」などのキーワードを先生が子どもたちに投げかけ、それらを養うトレーニングが重ねられていく。「これから君たちは世界基準の技術や情報を知ることができるんだよ。」という先生の言葉は「大人はそのままでいいのか?世界中の最新の情報に触れることができる子どもたちに向き会う資格と覚悟はあるのか?」と言われている気がした。
◎まとめ
2日間のバレー塾に参加させてもらい、今回もたくさんの気づき、学びそして素晴らしい出会いがありました。また、2か月前に下関で会った子どもたちの成長度合いに驚きと感動を覚えました。やはり本や動画だけでなく、バレー塾会場での「生の学び」の重要性を実感しました。
最後に、短い準備期間の中で企画運営をしてくださった南片江ジュニアの川畑監督や保護者の方々を始め、天神山ジュニアの指導者、保護者の方々にこの場をお借りして感謝とお礼を申し上げます。
