第2637話・・・元監督・現教頭の視点(53)
2016年 07月 26日
夏休みが始まりました。いよいよ小中高の全てのカテゴリーにおいて全国大会が開催されるますね。寄付集めなど周囲への協力をお願いしているチームもこの時期たくさん見かけますね。スーパーに行くと、募金箱が置いてあるのをよく見かけます。「○○少年団は全国大会に出場することになりました。遠征資金が足りません。寄付をお願いします。」などというポスターとともに。
また、さらにエスカレートすると見ず知らずの会社や家等を個別訪問しているチームも見かけます。私が見ていて「えっ」と思ったのは、子どもにお願いさせて、その後ろに親がついてまわっている光景でした。子どもにこんなことをさせるの?と思ったものでした。
当然、そんなチームに対しては、批判が多くなります。「どうして見ず知らずの私たちがあなた方に寄付をしなきゃいけないの」「子どもに夜に募金箱をもって訪問させるってやりすぎではないですか」など、せっかく全国大会出場を決めても周囲との摩擦が多くなっているチームをよく見かけます。
私の個人の考えを言うと、極端にいえば私は寄付活動は必要ないと思います。子どもたちは自分の力で全国というステージを獲得したのです。だったら、保護者も自分たちで何とかしてお金を用意する必要があります。最初から寄付をあてにするぐらいなら、全国に行く必要はないと思います。
私は全国に行った時に、子ども一人の遠征費が15万円ぐらいになりました。親もついていくことになると、一家庭30万円以上はかかる計算になります。市から出る補助金は選手一人に1万円でしたので到底足りません。しかし、寄付活動をしなくても、選手の親戚・チームのOBなどから自然と集まってきました。それと私が一番うれしかったのは、こちらがお願いしなくても寄付をもってきてくれる団体がたくさんあったことでした。当時、チームではこんな活動をしていました。
①地域の夏祭りで選手が「よさこい」を披露する
②地域のイベント、カラオケ大会等に保護者が参加して盛り上げる。
③地域のボランティア清掃への参加
④保護者会主催によるバザー開催
⑤高齢者施設での合唱 などです。
また、私がうれしかったのは、保護者がコンビニの深夜・早朝のアルバイトをチームの保護者で交代してやって活動資金にしていたことでした。このアイディアと行動力には驚きました。親もがんばっている姿を子どもに見せていたのです。
全国大会という夢の舞台へ出場するチームの皆さんへ。
「全国に行くから寄付するのは当然よ」という雰囲気がチームから蔓延していませんか? そういうチームにかぎって、寄付のお金の使い道が不透明で、「親たちの飲み食いに使われている」などの噂がたち、チーム衰退・崩壊への道へと歩むことになります。せっかく勝ったのに、勝ったことで失うものが多くなるのです。
私は草野先生から「勝つための資格」ということを学ばせていただきました。①~⑤のアイディアも「徳を積んだ人は孤立しない。必ず理解者・協力者が近付いてくる」という教えから学んだものでした。また、常に三つの納得の「周囲は、世間は納得しているか」ということを考えていました。
この世界、勝って崩れるチームと指導者がどれほどたくさんいることか・・・。もう一度、自戒の念を込めて足元を見つめ直してください。