第2554話・・・元監督・現教頭の視点(20)
2015年 12月 25日
保護者の皆さんへ
〜保護者がいい指導者を育てるのです〜
指導者目線での話題ばかりでしたので、今日は保護者の皆さんへ考えてほしい話題を提供したいと思います。いつものように私の主観ですが気楽に読んでいただければと思います。
①「先生、どうしてうちの子は試合に出れないんですか」
こんな言葉をよく投げかけられました。けど、まだ、これはいいほうでした。
②「どうしてうちの子をこ
このポジションで使うのですか」
③「先生のタイムの取り方、見ていていつも
ワンテンポ遅いんです」
と自分がバレーをやっていた保護者は
指導者のあらゆることに口をはさんできます。
④「先生、もっとバレーを勉強してください。
いろんなチームの指導者と親が○○のチームは
もっと勝てるのにと言っています」
⑤「先生の練習予定は、休みが多いです。
○○のチームはこの倍はやっていますよ」
と、要求はどんどんエスカレートしてきます。
私もよく自分のチームの親から締めあげられました。
多分、今年一年、親から理不尽なことを言われたり、要求されたりして、何度もいやな気分になった指導者の人はたくさんいるはずです。今の保護者は、学校に対しても気軽に自分勝手な要求をしてきます。
・「うちの子の成績が上がらないのは、
先生の教え方が悪いからです」
・「もっと授業をおもしろくやってください。
うちの子は先生の授業は
真面目すぎてつまらないと言っています」
バレーの指導者だけではありません。教師も一部の保護者から
理不尽なパッシングを受けて苦しんでいる人がたくさんいます。
私が今の親を見ていて一番感じることは、
「他人に厳しすぎる」ということです。
また、成果が見られないとすぐに
他者を攻撃の対象とすることです。
自然体バレーの教えは、指導者だけに発信されているものではありません。親の皆さんにも発信されています。私たち指導者は「親を育てる」ということも重要な視点としてチームマネジメントに取り入れていく必要があります。
けど、結果がなかなか伴わない時に、理想を語っても、余計にパッシングを受けるのはわかっています。私がそうでした。勝たせられないのに自然体の練習メニューや人間学を説いても「勝ってから言えよ」と火に油を注ぐことがありました。
けど、私は「地獄で仏」というように一部の親に救われました。
「先生、私たちは先生のやり方に付いて行くからね。確かに結果は出てないけど、先生は教師という仕事が終わってからも放課後も休日もつきあってくれる。私たちはそれだけで感謝していますよ」
とこんなことを言われたことがありました。有り難かったです。涙が出るほどうれしかったです。けど、そんな反面、「どうして勝たせられないのか」という思いが強くなりました。こんな自分についてきてくれる・・・。自分は本気でバレーと向き合っているのか?そんなことに気づかされました。その時、私は思いました。嫌いだと思っているものを強くできるわけがないと・・・。バレーが強いことで天下をとったみたいな指導者をうらやましいと思う反面、どこかで軽蔑していた自分・・・。強くしたいのにできない自分・・・矛盾を感じました。
けど、私は地獄で出会った保護者の存在があったからこそ、勇気をもらいました。親に助けられました。救われました。
保護種の皆さん、批判する時があってもいいです。けど、どこかで「先生、ありがとうございました」「先生についていきます」なんて言葉をかけてやってください。多分、そんな言葉がかけられる保護者の集団のチームは、絶対に指導者も伸びていきます。
私は教師になったころ、先輩からこんな言葉を教えられました。
「教師が子どもを育てるのではない。教師は子どもによって育てられる。そして、その親によって育てられ一人前になっていく」という言葉でした。
バレーの指導者もそうです。子どもと親によって育てられていくのです。どんな一流の指導者でも芽が出ない不遇の時代があります。悔し涙と失意のどん底で、もがいていた時代が・・・。
一流といわれる指導者の人が口に出す共通項があります。
「苦しい時に選手に救われたことよりも、
親に救われたことのほうが多かったと思う」
という言葉です。
親の皆さん、指導者を育てるという視点をもってください。それだけで、どれだけ たくさんの指導者が救われることか・・・。
私はあの親たちの存在がなかったら、途中でバレー指導をやめていたと思います。 そして、自然体バレーにものめり込まなかったと思います。
私が本気でバレーと向き合った最大の理由は、
親からの励ましの言葉があったからかもしれません。