第2551話・・・元監督・現教頭の視点(18)
2015年 12月 17日
【勉強しているのに効果が上がらない理由】
自然体バレーのDVDにとどまらず、どれぐらいバレーボールのDVDを購入しただろうか?おそらく、車一台は買えるぐらい、つぎこんだと思います。しかし、その頃の自分は、以下のような効果の上がらない負のスパイラルに陥っていました。
①練習メニューを勉強して、ノートにまとめる。
②次の練習でそのメニューをやる。
③子どもたちは新しい練習メニューなので楽しそうにやってくれる
④しばらくの間は、そのメニューに取り組むが、いつのまにかやらなくなる。
⑤そしたら、次のDVDを購入。同じことの繰り返し。
○自分のチームの子どもに何の力をつけようとしているのか?
○どうやって、いつまでに定着させようとしているのか?
この二つが抜けていたため、この頃は、「何となくできたふり」「とりあえず、練習が楽しくなるふり」をしていただけでした。
おそらく私のような落とし穴に落ちている人はたくさんいると思います。
けど、一度はこの落とし穴に落ちることも大切です。
「自然体バレーのDVDを何度も見て勉強している」
「講習会にも何度も足を運んでいる」
「塾長の講義もライブで何回も受けている」
けど、結果が出ない。そして、そんな時に私がよく聞いた台詞が
「自分は、「勝ち」にこだわるバレーをしていませんから。目先の一勝よりも選手の将来を見据えた指導をしています」
こんなことを言う指導者によく出会いました。私は、これは自然体バレーを誤解しているな、または、都合のいいように逃げているなあ・・・・と感じるときがありました。
だから、「自然体バレーは勝ちを目指さないで、楽しくやればいい」みたいな間違ったイメージが独り歩きしている時代もありました。
草野先生が提唱していたのは、「週4回の練習で全国を目指せ」というものでした。この言葉を聞いた時、私は衝撃を受けました。私は年間300日は練習するタイプだったからです。
しかし、一見、無理なように感じる週4日ですが、今となっては、「週4日練習」を取り入れているチームはかなり多くなりました。それもかつては、名門チームと言われた強豪チームが週4日練習へとシフトチェンジしているのです。この背景には、「小学校スポーツの異常性」が認知されるようになったこと。そして何よりも最大の理由は、「名門チームでもクラブ員が入ってこない」現実を突きつけられているからです。
草野先生の先見性には改めて驚かされます。おそらく、先生は小学校バレー界の体罰・暴言、過酷な練習状況を見て、このままではバレーをやる子がいなくなってしまう・・・と思い、様々なバレー界の概念と対立する構造を提唱していたのだと思います。
さて、週4日で全国に行くためには、最短距離の道のりを歩く必要性があります。
ですから、今、自然体バレーを中心軸にして指導している指導者の皆さん、「勉強してるのに、なぜ、効果があがらないのか」ということに気づけるかどうかがポイントになります。私も勉強しているのに、チームが強くならないことへ疑問を感じることから、スタートしました。そこで、練習の流れを見直してみました。
バレーボールの練習は、①アップ ②パス ③指導者によるボール出し、スリーメンなど ④レセプションとディグ ⑤サーブ ⑥スパイク ⑦ゲーム・フォーメーション ⑧クールダウン がほとんどの流れだと思います。私は、この流れを疑ってみました。
例えば、「何となく練習する」ことをやめました。練習メニューの基本的な考えとして
□タイムリミット型⇒制限時間を決めて行う。
(例) ストレートを狙う練習三分。
□ワークリミット型⇒条件をクリアするまで
(例)このポイントにAパス5本
□アベレージ型⇒確率基準をクリアするまで。
(例)10本中8本のサーブをゴム下を通す
このような分類をしながら、あとは、ミックスさせていきました。例えば「タイムリミッド+ワークリミッド」型等です。「2分以内に5本連続のサーブを○エリアに入れる」ようなタイプです。
また、練習メニューをその場の思いつきから、週の練習メニューをある程度決めてから練習するようにしました。月曜日には、今週の身につけたい重要テーマを発表します。そして、そのために今週はこんなメニューを、こんな意識で取り組んでほしいということを伝えます。
また、練習メニューの中には、「細分化練習」「習熟練習」という時間も設定して、「なぜ、できるようにならないのか」を考え、もう一度スモールステップを積み重ねたり、できるようになったことを定着・習熟させるための時間を週末には必ず入れていました。
このように「何となく」という練習の流れではなく、「見通し」を持って取り組むスタイルに変えてみました。このころから、チームは確実に強くなり、レベルアップしていきました。
当時、私のクラスに自閉症の子がいました。この子は、一日の流れを細かく提示しないと不安になり、学習効果も上がりませんでした。何かそのあたりのことから、ヒントを得て、こんな練習サイクルを提示するようになったと記憶しています。
このような提示をするということは、指導者も先を見通す目が求められます。何より、スケジュールを組むという事前学習をします。また、子どもたちも練習テーマと内容を提示されるので、「何をするか」がわかるので、目的意識をもって、練習に取り組むようになりました。
自然体バレーへの練習メニューをただやらせているだけでは、効果は上がりません。そのメニューの中で身につけさせたい力をいかに「定着・習熟」させるか、このあたりのところに目を向けられるようになると、指導者としても一皮むけて、チームも成長していきます。
①「今のうちのチームに身につけさせたい力の焦点化」
②「そのための練習メニューのセレクト」
③「子どもに伝える術の工夫、言葉・説明などの準備」
④「定着と習熟を図るためのスケジュールの決定」
このような四つのステップが、最低でも考えられると思います。
私は草野先生から、「準備することの大切さ」を学びました。人前で話すなら100回は練習すること、伝えるためにもそのぐらいの準備は必要だということを教えられました。
このあたりのことに本気で向き合うかどうかが、指導者としてのターニングポイントになってくると思います。