第2505話・・・二人の師匠(2)
2015年 09月 18日
昭和35年(1960年)の経営方針発表会の席上、創業者は、「5年後の昭和40年から週5日制を実施する」という宣言を行い、日本中を驚かせた。まだ日本では土曜休日など誰も現実の問題とは考えていない頃の話である。大きなショックが松下社内に走った。この競争の激しい業界の中で率先して松下が週休二日に踏み切ったらどうなるか、それに堪えられる生産性の向上はできるのか、お得意先、消費者にご迷惑をかけないようにできるのか・・・。
それに対して創業者は
「一番早く週5日制に踏み切ったアメリカの繁栄していることを考えると、週2日休むというものは基本的には間違っていないと思う。「1日教養1日休養」というくらいの余裕を持たなければ厳しい世の中の変化、密度の濃い毎日の仕事についていけなくなるのではないか。そういう世の中に備えようではないか、しかし結果がそうならなければ時期尚早ということで元へ戻すことも考えても良い。しかし、それでは能力のないことを自ら示し、先進国にはついていけないことの証明になる。我々はこれに成功し、これを契機に、松下電器をさらに発展させようではないか」
昭和40年(1965年)4月、週5日制は日本の大企業の中ではトップを切って実行された。その後、日本の各企業は、なだれを打ったかのように週5日制に踏み切って行った。よそがやるからうちもやらねばならないという後追いの形で進めていたならば、生産性倍増はけして成功せず、諸々の改革もうまくいかなかったにちがいない。
自分に厳しい課題を与えて、そのことを通して経営の体質を改革するという創業者の経営の進め方が見えて来る。革新とはよそに先駆けることによって初めてエネルギーが生まれるという経営の鉄則を、この時に全社員は教えられたのである。
by kusanokenji
| 2015-09-18 10:48
| ■連載“日々努力”