第1641話・・・仕事のイロハ
2011年 05月 19日
「私は1993年に大和団地の再建にいきましたが、土地の稟議書を支店長が上げてきますね。それを社長の私が判を押すまでに15人も見ている。起案書の日付を見たら二週間もたっているんですよ。その時から、二週間たった稟議書は否決することにしました。本当にいい土地が二週間も残っているわけがないですから。
その間、判をついた役員を呼んで、賛成の判を押しているけれども何を根拠に賛成したのかと聞くと、答えられない。土地を見たのかと聞くと、見ていませんと言う。見てもいないやつが無責任な判を押すなと怒ったのですが、そういう仕事のイロハから教育しなければなりませんでした。
団地の社長に就任する時オーナーから「以後、君が見ていない土地は買うな」と言われていたので各支店から「こんな土地を買いたい」と上がってきたら、北海道から九州まですべて見にいきました。ほとんど日帰りです。
その土地に立って、いろいろ思い当たることを全部担当者に聞きます。学校はどこだ、買い物はどこでするんだ、病院はどこか、ここに〇階建てを建てたらあそこの家は日陰になるんじゃないかとか、全部聞いて、最後に「ここに建てて自分で住みたいか」と聞いて、すべてクリアしたら、そこで結論をだします。途中で答えられなかったら、そんないい加減な物件ならやめておけと言います。
「よし、行け」となったらその場で折衝です。稟議書とか形式的なものは後でいいと。責任ある立場の人間が、現場で物を見て、現地の言っている人たちの意見を聞いて決める方が大事です。」
5月17日の毎日新聞に、岩手県釜石市の方の、こんな投稿が掲載されていました。
「『日本は強い国』『あなたは一人じゃない』といろいろ声をかけていただいてありがとうございます。ですが、私たち被災地に住む者には遠吠えにしか聞こえないのです。心には響きません。身近には何も感じないのです。
・・・・・・行政の広報やマスコミ報道の眼鏡を通してではなく、今、生きている私たちを自分の目で見、感じて、そして助けて欲しいのです・・・・」
そんな投稿を見て深く感じました。