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第1370話・・・干天に慈雨

 <叱り叱られの記・後藤精一>より

戦後すぐ、松下幸之助の義弟井植歳男以下7名で三洋電機北条工場(兵庫県)がスタート。軌道に乗りかけたある日、そこに突然GHQ(アメリカ軍)から工場視察があった。案内しようとしたところ工場の入り口で“ストップ”がかる。。脚立をもってこいといわれた。その上に査察官が新聞紙を置いて腰をおろす。あっけにとられる工場関係者を尻目に悠然と工場を眺める。その間10分。やおら「ヨロシイ。コノ工場は見ル価値がアル」。人の流れ、部品の流れ、機械の動きと、全体のレイアウトを上から見たとき、多くの工場は落第だという。そんな時はサッと帰る。帰ったら「ダメな工場」という烙印を押され、企業の発展はない。人に“人相”があるように、工場にも“工場相”があるということ。一時間もあれば一回りできる工場見学に彼らは5時間もかけた。質問の嵐が吹き荒れる。
まず腰かけから・・・。
 
「なぜこの腰掛を採用したのか。高さは何を基準にしたのか」「・・・・」
「なぜこの機械はここに置くのか」「・・・・・・・・」
「この場所の照明は、何を基準にしたのか」「・・・・・・」
   リンゴ箱の大きさの製品箱を見ると
「この大きさは何を基準にしたのか、これは機械で持ち運びするのか」
「人間が運ぶのか、工場長は一人で持ち運びができるのか」
  はじめから”ここが悪い”とは言わない。まず理由を聞く。
答える。答えに窮する。それではこうしたらどうか。相手の納得づくで
同調できるように助言を積み上げていく。いささかも妥協を許さない。
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腰掛一つにも、人間がより楽に、しかも生産効率の視点から考える。
人間工学の理論に基づく指摘を、干天の慈雨のごとく、我々はむさぼった。
世間にはこれほど頭のいい人がいるものだ、我々は修行が足りん。

「あいつが一生懸命働いてくれたら・・・・・」
「もっと努力してくれたら・・・・」
「もう少し頑張ってくれたら・・・・」
人間の“やる気”に頼るのでなく、“人が普通の働きをした場合”を中心に
合理化をすすめていく。帰っていくGHQの能率技師を見送りながら、
心の中で井植社長に報告する。
「喜んでください。この田舎工場もやっと、先進国の技術屋の目に止まるまでに
成長したらしいですよ」
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干天慈雨の如く・・・・・伸びる人間は器が違う。
ここから、三洋電機の急成長が始まったのである。
努力や苦悩無しの喜びはないことの再確認。
20年ぶりに読み返した本。
心の中でふつふつと熱いものが湧き上がる思い。
気がつけば徹夜して読んでいた。
by kusanokenji | 2010-04-15 06:53 | ■連載“日々努力”