第1223話・・・フローターサーブⅢ
2009年 10月 09日
肩のニュートラルポジションとは=「楽な姿勢」+「脱力したリラックスした状態」+「スポーツパフォーマンス向上」+「故障の予防・改善」に効果のある姿勢でもある。
■静止状態から準備動作なしで急に主動作に動き出すようなスポーツ場面では体の状態を最も楽に、スムーズに始動できやすい状態にしておくことが必要である。
■特にサーブのように、静止状態からわずかな準備動作でもって急激なスピードを発生しなければいけないような場面ではこの肩のニュートラルポジションは大きな効果が期待できる。
■具体的に言えば、肩関節が内旋状態(机に向って書道をしている姿勢をイメージしてください)で上腕骨の骨頭が関節にすっぽりはまったバランスの良い状態である。
■その効果は背筋群がリラックス状態になり、腹筋群が動きやすい状態になる。さらに脇が開いて腹筋が使われやすくなると、わき腹にある前鋸筋と呼ばれる筋肉が働きだす。この筋肉は肩甲骨ともリンクしており、バレーボールのスパイクやサーブ、野球のピッチャーにとっても隠れた主役の筋肉でもある。
■10数年前にゴリラポーズというのがバレーボールマガジンに掲載されたがご存知だろうか。自然体バレーのプレー前の“構えの姿勢”である。色々なポイントがあるのだが、肩に関するところに限ると、上腕部を軽く内旋し、肘を90度ぐらいに屈曲、手首をだらりと垂れ、特に親指の力をぬくことで、次の瞬時の動きに対応できる。この肩がニュートラルポジションをとっているのである。このことによって、腹筋が働きやすく、体幹をバランスよく使えるようになるのである。(ティンカーベルズのブログより)
■逆に肩のニュートラルポジションを外れたらどうなるか・・・・肩甲骨が後ろに下がって肩関節が外旋状態のことをいう。この状態からの始動は非常に大きなエネルギーを必要とし、少なくとも「体が動きやすい状態」とは言えない。腕を真上に伸ばして構えるフローターサーブの構えである。いわゆる体が硬直してガチガチな状態。したがって、ここから急激に力をいれると全身の筋肉や靭帯や関節などに無理がかかり故障に発展することが大いに予想される。
■「気をつけ」の姿勢で胸を張り、脇を締めると肩と肩を結ぶ線が一直線に近くなり、肩から肘の部分、すなわち上腕部が外旋する。肩甲骨が後ろに下がり上腕部が外旋すると背中の筋群が緊張して、力の連鎖がブロックをされてしまう。そもそも「気をつけ」の姿勢は整列の時に体がグラグラするのを防ぐためのポーズでもある。脇を締めると前鋸筋も使えなくなる。バレーボールのフローターサーブの時によく見られる「利き腕を天に向けて真っ直ぐ伸ばし、反対の腕も真っ直ぐ水平に伸ばしてボールを置く」ポーズもまったく同じスタイルのように思える。これこそ究極の肩関節の外旋状態であり、体をガチガチ状態にしていると思うのだがバレーボールのフローターサーブの場合なぜかこういうフォームが多い。筋肉隆々、力が有り余っている大人の選手ならさもあらずであろうがジュニアの選手がこういうフォームでそれも力いっぱい打っている姿はなんとも痛々しい。しかも「ジュニアはサーブが勝負」と言って、大人の選手よりもスピードを要求されるのも痛々しい。肩や肘が壊れはしないだろうかといつもヒヤヒヤしながら見ているのである。
■写真は自然体で推奨しているフローターサーブの構えに近い構えである。本来ならば右手はダラリを下げて若干肘を曲げて前腕回内、手首は尺屈状態。指先は床方向。左手は肘を若干屈曲、手の平にトスのためのボールを置く。この時軽く膝を屈曲し軸足(右利きの場合右足)に重心を置いて反対の足は軽く浮かす程度にする。視線は軽く上目使いで半身に構える。ここから先にトスを上げて、左足の踏み込みと同時に体幹の捻りをいれた重心移動を伴ったスイング動作に移る。踏み出す左足のツマ先をボールの方向に向けるとよいだろう。
■インパクトは手根部の固い部分。指先はボールに触れないのがコツ。
打ち方は三種ある。ボールをインパクトしたら腕を「止める・伸ばす・素早く引く」
ボールを飛ばす方向に手首を向ける。手首もボールと一緒に飛んでいけ~みたいな感覚がよい。
最後はD2ライン(肩甲平面上)にフォロースルーする。その時、重心は左足に移動している。
理想的な体の捻りは「肩は90°、体幹部は45°」である。