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第1140話・・・初乳の話

初乳の話
 つい先日(平成21年5月)新型インフルエンザ問題で大騒ぎになったけど、生まれたばかりの赤ちゃんは初乳によって感染から守られることをご存知だろうか。母親の母体から出る初乳を赤ちゃんが飲むと母親の免疫抗体を譲り受けるのである。免疫抗体とは外から体内に侵入してくる伝染病などのウイルスや細菌を排除して自分の身体を自分で守る力のことである。母親がこれまで体験した感染によってつくられた抗体(これが体内にできると二度と同じ病気にかからない)が初乳に含まれているのでこの効果があるらしい。この初乳は生まれてから3~4日目ごろまで母体の乳房から分泌される淡い黄色半透明な乳汁のことで、4~5日目から分泌される白色不透明な普通の成乳とはまったく成分が違うらしい。この初乳を赤ちゃんが飲むことにより赤ちゃんを感染から守ってくれるわけだ。そしてそればかりでなく子供の「忍耐力」などの性格もこのときの体験が結構影響するらしい。いわゆる「切れない子供」「我慢強い子供」「穏やかな子供」「落ち着いた子供」の原点は初乳にあるとの説もあるのである。
 
 生まれたばかりの赤ちゃんは目も見えず口も聞けないが口だけは本能的に動くことはみんな知っての通り。生まれてすぐオギャー!と泣くことと、そして“吸う”ことは誰に教わるでもなしに本能的にできるのだ。これは凄いことではないか。神秘な人間の姿だ。かくして生まれたばかりの目も見えない赤ちゃんがお母さんのオッパイを口に加えて吸うのであるが、しかし母親の母乳は最初なかなか出にくいのである。看護師さんが温めたガーゼで乳房の周囲をゆっくりマッサージしてくれるのも出にくい乳を出やすくするためである。かくして母親の出ない乳と、それを吸って出そうとする赤ちゃんの格闘が始まるのである。実はこの姿がオッパイを出すための母と子の、世の中に生まれて最初の協同作業である。赤ちゃんは出ない乳を出そうと必死になる。母は痛いのを我慢する。これこそ“忍耐”である。この経験のあるなしは実に大きい。ミルクで育てる最大の短所は「欲しい時にすぐ手に入る」ことである。しかし母乳はそうはいかない。努力と忍耐とタイミングが必要なのだ。簡単に欲しい物が手に入らない、それ相応の努力無しでは簡単に手に入らない・・・そういうことを生まれてすぐに脳にインプットされるのであろうか、この差は大きいと言われるのである。
 実はこの話は昭和47年ごろ岡山の産婦人科の先生が長年の研究調査結果を朝日新聞に連載されていたのである。その時、僕は結婚してすぐだったので新聞の切抜きをしていたのである。そこに書いてあったのが上のような内容であり、そして人間の子どもを育てるのに牛の乳を飲ませるとは何事じゃ!とか、おっぱいで育った子とそうでない子の健康や性格などのデーターなどに及んでいたように思う。なんとセンセショナルな記事だと感動したが、その後何回もの引越しでその新聞の切抜きが手元にないのが残念だ。
 こんな情景を思い出して欲しい。昔はご近所でもよく見かけた風景に違いない。縁側で子供がお腹すかして泣いている。一方、母のお乳がはちきれそうに張っている。僕の姉なんか、乳が出過ぎて困ってよく吸引していた。それくらいよく出る人もいる。この場合グッドタイミングだ。需要と供給のバランス最高。かくして母はお乳を飲ませて、はちきれていたオッパイがなくなって助かり、子供は乳を飲んで空腹が満たされて助かる。誰も苦しまず、誰も損せず、お互い喜び合い、感謝しあう。なんといういい関係か、いい光景か、これが日本の幸せな原風景だと今でも思い出す。したがって、僕の最初の頃の選手たちには「結婚して子供ができたら母乳で育てなさい」と口酸っぱく言ったもんだ。「24時間、マリアさまみたいな優しい眼差しで子供を抱きかかえて育てなさい。他人に預けて育てることは止めなさい」と、今の時代に言えばどこかの団体からクレームがきそうなことまで言っていた。とにかく“微笑ましい”。赤ちゃんを抱いているお母さんの姿は美しい。自然な作業だから美しい。一点のけがれもない清らかな微笑みがあるだけ。こういう自然な姿の生き方がいい。これが自然体の生き方だ。悪い子が育つはずが無い。
 話は変わって、この9月に我が家にも待望の2人の新しい命が誕生する。長男の嫁の初産と長女の二人目の出産である。2人ともなかなか授からずやきもきしていたが、不思議と同じ年の同じ月に授かったのである。紛れも無く天国の母親が神様にお願いしてくれたに違いない。一年前に無くなった母親の生まれ変わりであることに違いない。草野家の血脈を次の世に受け継いでくれる孫達との対面を心待ちにしている日々である。勿論我が家の2人の子供も今は天国にいる母親の母乳で育ったのは言うまでもない。
by kusanokenji | 2009-06-26 07:14 | ■連載“日々努力”