カモメ好きの少年が、毎朝浜辺でカモメと無心に遊んでいた。ある日、父親が言うには、「カモメがお前にたいそうなついているようだが、一つお父さんにカモメを生け捕ってきてくれないか」………翌日少年は海に行った。ところが、今度は一羽も降りてこなかった。この話は「無心の徳」についての話しです。私も、これと似た体験を沖縄のヤンバルでしました。私は沖縄の山奥に約1ケ月住んだことがあります。まったく自然の中での生活を体験させていただきました。ある日のことでした。久しぶりに海に出かける日の朝、主人である田場さんが「どうも畑を荒らす鶏が一匹いるので、今晩その鶏を食べましょう」と僕にこっそり話されました。夕方帰るといつもはそばにいても平気なのにこの日に限って「バ~ツ」と40数匹の鶏が一斉に空を飛び、近くの高い木に逃げてしまったのです。この時は本当にビックリしました。それで田場さんに聞いたら「今朝の話しを聞いていたんだよ、それで皆が警戒して逃げたのさ」と説明してくれました。動物は本能で殺気を感じるのですね。その晩、鶏は丸焼きにされて食卓に出されました。